ステンレス

 最近、エアコンを取り替えた。来てくれた工事の人と話をしたが、彼が一番驚いたのは、屋外で使う器具にはステンレスの部品を使うべきでないということだった。
 エアコンの本体は亜鉛引き鉄板(いわゆるトタンの類)が使ってある。それを組み立てるのにステンレスのネジが使ってある。見かけ上は高級感があるのだが、実のところ、それは本体の鉄板を錆びさせる元凶だ。亜鉛メッキがしてあるが、それが早く消耗する。どうしてこのネジを亜鉛引きの鉄ネジにしないのだろう。以前使っていたアメリカ製のエアコンは、そうなっていた。実際に長持ちする。
 日本製のエアコンは、技術革新が進むのが速く、実際に使われる時間が短いから、気が付かないのだろうか。

 エアコンを載せる架台が、新しいエアコンを載せるにはやや小さく、本体がはみ出ている。ネジも一部締められない。「ステンレスの針金で縛っておきましょう。」と言うので、それはやめてもらった。
「ステンレスを使うと、架台がすぐ錆びます。」と言うと、彼はしばらく口を開けて、黙っていた。そして、こう言った。
「確かにそうです。ステンレスと触っている金具がボロボロになります。どうしてですか。」
 それはステンレスを正極とする局部電池が形成されて、大切な鋼製の部品が腐食されてしまうのだということをいくつかの例を挙げて説明した。
 彼は、「知らなかった。どうしてそういう大切なことを、誰も教えられていないのだろう。この国の教育は間違っている。」と言った。「いや、絶対に壊れてはいけないもの、例えば造船とか橋梁の世界では教えられているはずです。でも、民生品は寿命が短いのでいいや、ということなのでしょうね。私も様々な電気メーカに手紙を出しましたが、ナシのつぶてです。建築業界も全くダメです。」と言うと彼は天を仰いだ。

 彼は研究熱心な人で、「それではアンテナの張線(TVアンテナなどを倒れないように支える針金)はステンレスが良いでしょう?金具をステンレスにすれば良いのでは。」
「いや、それは別の意味で最も良くない方法です。亜鉛引き鋼線を使うべきです。ステンレスは伸びるのですよ。」
「あっ、そうです。それは私も不思議だと思っていました。去年張った線が、今年になって調べに行くと緩んでいるのです。昔はこんなことはなかった。」
「ステンレスはいくらでも伸びます。毎年締めても同じことです。ステンレスのボルトもダメです。いくら締めても緩みますよ。」
「確かにそうです。緩みます。どうしてこんなことが放置されているのですか。」
「最初に言ったように、買替えまでの時間が短いということなのでしょうね。想定寿命が短くて、本体が錆びたり、アンテナが倒れたりすることがほとんどないからでしょう。それと見かけの問題もあるでしょうね。ステンレスは見かけが良いのです。」

 彼は、「大変なことを知ってしまった。会社に帰って報告します。」と言った。うまく行くと良いのだけど、過去の筆者の経験から行くと、誰も気にしないのだろう。この国の教育は間違っていると彼は言ったが、全くその通りである。小学校からそれを教えないと直らないだろう。 
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コメント

No title

世に出回っている科学的な根拠に乏しい製品の多さをみると、この国では多くの人が自分で考えることを放棄しているように感じてしまいます。

さて、記事についての質問です。
ステンレス中のクロムが亜鉛よりイオン化傾向が大きい事が原因ということでしょうか?

記事以外の質問です。
CODを求める際に塩化物イオンを取り除くのに加える硝酸銀ですが、硝酸イオンがシュウ酸と反応してしまいませんか?少量だから無視するのでしょうか。

No title

ステンレスの状態は単純ではありません。単なる合金ではなく、その表面に強固な不働態膜が容易にできるところが不思議です。もちろん、酸素と水が必要です。両方ないとできません。
ステンレスは異種金属と接触させたときの電位が高いことがわかっています。場合によっては、銀より高いのです。したがって相手の金属が酸化されます。

硝酸イオンは酸性領域では酸化力が強いのですが、硝酸銀は中性ですから、その心配はあまりありません。しかし硫酸銀を加えたほうがより安全です。専門書を読めばそう書いてあるはずです。

No title

いつも拝見させていただいてます。
局部電池における解釈が妥当であるかの添削および質問をお願いします。

話を単純化するため亜鉛と銀で局部電池となる際を考えます。
このとき亜鉛では酸化が起きて、銀では還元が起こると思います。
銀は単体であり電位は0であるはずなので、銀自体が還元されることはない。
となると還元されるのは、水中の酸素もしくは水素イオン・銀表面の酸化皮膜になるかと思います。
金属によって腐食の起こり方が違う(ステンレス>銀など)ということならば、後者の銀表面の酸化皮膜が銀へと還元されるのだと考えるのが妥当であり、
もし前者(H+やO2)が還元する場合は、ボルタ電池と同じような状況となるので、水素化電圧や酸素化電圧が関係してくるかと思います。

銀表面の酸化皮膜の還元が起こるとすると、還元し尽くした純銀の状態では、局部電池を生成しないということになりますよね?
また、金や白金といった酸化皮膜がほとんど生成しない金属との異種金属接触腐食は起こりうるのでしょうか?

長文になってしまいましたが、よろしくお願いします。

No title

局部電池という言葉がここでは適当でないように思います。普通の電池です。
純銀になった後は周りの水などが還元されるはずです。水素過電圧などは反応速度の関数なので、想定しているような条件では事実上ほとんど反応速度はゼロで、考慮する必要はありません。
異種金属の接触による腐食は、水の介在によって起こります。極端に乾燥していれば全く起こらないわけです。日本のような湿った環境では、金属表面の微細な凹凸の中に、極小の水滴が生じることが分かっています。
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