バッテリーから硫化水素?!

 よくわからない記事がある。
 この記事によると、鉛蓄電池から硫化水素が発生するとある。そんなことが起きるはずはないのだが、このイエローハットの工場長と称する人が何か言っているようだ。
 希硫酸が発生するなどとも書いてあるが、一体何を言いたいのだろうか。

 過充電は昔よく経験している。鉛極の上で水の電気分解が起こる電圧2.2ボルトを超えると、酸素、水素を放って水が減っていくが、硫化水素は出ない。還元されて生じるのは水素である。硫化水素を水溶液の還元で作るのは、この電圧ではまず無理である。
 しかしこの人は経験があるようなものの言い方である。硫化水素が出れば、鉛は真っ黒になるはずである。そんなことはあり得ない。

 死因が何かはいずれ解明されるだろうが、不思議な話である。拙著プラグマティック化学の152, 157ページに関連したことが書いてあるので参照されたい。

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酸性次亜塩素酸!?

 武漢肺炎禍でアルコール消毒液が足らなくなってきて、そのうちに表題の酸性次亜塩素酸とかいうものが出て来た。効果があるというが、よく分からない話だ。

 塩素水を作る。その中には塩酸と次亜塩素酸が生成する。微酸性だ。酸化数が+1と-1に分かれて平衡に達する。これは保存できるだろうか。光があるとすぐに分解されて酸素と塩酸になるはずだ。水道水は希薄な塩素水を用いているのが大半だ(一部はオゾン処理水だそうだが、比率としては極めて少ない)。
 その希薄塩素水で金魚を飼う時には光を当てたり、塩素分圧が0(ゼロ)の空気を入れて塩素を追い出す。要するに微酸性の塩素水は光に当てた瞬間に壊れ始める。

 それではアルカリ性にしたらどうだろう。これは長持ちする。大型トラックで次亜塩素酸ナトリウム水溶液を運んでいる。半透明のガラス繊維強化プラスティック・タンクが付いているトラックを見たことがあるだろう。直射日光を当てても壊れない。家庭にあるハイターなどの商品名で知られるものはこれだ。

 ここまで書けばお分かりかと思うが、商品としては酸性次亜塩素酸水溶液はかなり怪しい。蓋を開けると希塩酸と酸素になっている可能性が高い。効果が証明されているとか書いてあるが、それは製造時の話で、1月ほど棚に置いてあって光が当たった後の物を測定したわけでもなさそうだ。

 このような商品を見ると、いかに科学教育というものが、無力であるかを痛感する。(化学教育ではない。科学教育である。)

 

質問があった

  p.51の問題について質問があった。

『三連球を用いた蒸気圧の測定法』についてご教示ください。
【解答】にある、分圧比=物質量比で導いた飽和蒸気圧pについて、分圧比に対応した物質量比の分子(分数の上側)の圧力 P は、混合気体中の空気の分圧 P-p としなくてよいのでしょうか。あるいは、何らかの近似を前提としているのでしょうか。

 結論を言うと何も間違ってはいない。これは良問であって、授業では解答時に、「ああっ」とため息が漏れるのをよく聞いた。気が付かなくてはならない部分を見落としがちなのだ。
 気を付けるところは質量保存則である。左から送り込まれる空気は、右側では”被検液の蒸気によって薄められて”出て来るが、その物質量は何ら変化していない。
 
 近似は、ないと考えて良い。厳密に言うと、被検液の液面下に入っている深さの分だけ圧力が掛かるが、ここでは無視している。実験時にはここを泡がかろうじて出る程度の深さにする。ゆっくりやれば、蒸気で飽和する。

 この実験は現代の高性能な機械が無い時代に、質量測定だけで蒸気圧を得る非常に具合の良い方法であった。質量は、当時でも 1 mg程度の測定は可能であったからだ。

 この問題は昭和50年代初頭の三重県立大学医学部(現在の三重大医学部)の問題であった。当時この学校で教鞭をとっていた化学の教授は非常に優秀で、良い問題を出していた。講義も素晴らしかったと聞いている。

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