ハンダ付けを外す

 真鍮細工を業としていた人の話である。昭和30年代は真鍮(黄銅)の価格が高く、失敗作から真鍮の部品だけを外したかった。誰が思い付いたかは知らないが、苛性ソーダで煮るという方法があった。
 鍋の中に失敗した細工品を入れ、苛性ソーダNaOHを投入し、ひたひたに水を張って煮るのだそうだ。30分も煮るとハンダは見事に消え去って真鍮だけになるという。

 ハンダは鉛とスズからなる。どちらも両性元素であるから、強塩基の高温水溶液には溶けてしまうだろう。真鍮は銅と亜鉛の合金だが、金属間化合物ができているので、亜鉛の性質は表れにくい。
 すなわち、鉛とスズは溶けて真鍮が残るという訳だ。
 それを伝え聞いた別の工場の人が真似をした。アルミニウムの鍋を使ったのだそうだ。5分も経たないうちに鍋は消滅し、大変なことになったそうである。

 理屈は大切である。それを知って応用すればよりうまく行くだろう。見かけだけを真似するととんでもないことになるという例だ。
 
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鉛と活字合金

 活字は鉛とアンチモンなどからできている。鉛だけでは凝固する時に収縮が激しく、型の通りには活字ができない。

 金属学者は種々の合金を作ってテストし、一番良いのは鉛80%、アンチモン17%、スズ3%ということになっている。硬く、凝固時に体積が微妙に膨張する(型の隅ずみまで流れ込むこと)ことが特徴である。

イメージ 1

 鉛だけを融かして、直方体の鋳型に入れて冷やすと手前のような形になる。下の方から固まるので、上部は凹み、上の方の面は内側に倒れ込んでいる。直方体のものを作ろうと思うと、鋳型に合うピストン状の押し型を作って、収縮時に押し込まねばならない。

 後ろのものは面倒な形の鋳型に流し込んだのだが、活字合金であるから、注ぎ込んだそのままの形を保っている。
 電気ドリルで穴をあけるのも容易である。鉛ではそうはいかない。鉛は軟らか過ぎてドリル刃が喰い込んでしまう。活字合金は硬いのでサクサクと削れる。ネジを切るのも容易である。もちろん切粉は再利用する。

 融かす温度は240℃であるから、ステンレスのお玉の古いのを使っている。注ぎ口を曲げて付ければ、具合が良い。

 鉛はドイツを中心に排斥運動が起きている。どんな微量でも使ってはいけないと主張しているが、自然界において、鉛の存在頻度は高く、殆ど意味のない規制である。無鉛ハンダを使えと言っているが、千年以上の実績を持つ鉛ハンダをやめて急速に開発された無鉛ハンダのみを使うのは、性急に過ぎる。コンピュータが故障して、電車が止まり、飛行機が落ちるということは全く考えられないことではない。

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