局部電池

 最近は妙に忙しく、ブログの更新が途絶えていた。Pragmatic Chemistry のウェブサイトは相変わらず閉じたままだが、CDを作ってほしいという申し出は多く、買ってくださる生徒さんには感謝する。

 さて、オートレース(国際的な二輪車のレース)に関連する友人が遊びに来て、興味深いことを言う。あるメーカーのレース用のオートバイが約1000万円ほどするのだそうだ。最近は2000万円くらいのもあるそうだ。考えられる最高の材料と最高の技術を使って作るのだから、その価格は当然である。エンジンは水冷である。そのウォーター・ポンプはマグネシウムで、できていると言う。レースの間、持てばよいから、肉の厚さは最低限にしてある。

「軽くて硬いからね。薄いんだよ。厚さは1mmくらいなんだ。レースが終わったら水を抜いて乾かさなければならない。うっかりしてそのままにしておくと、ポンプ・ハウジング(ポンプの形をしている外側の部分)が溶けて穴が開くんだ。触るとね、くしゃとつぶれるんだよ。」
「つぶれたらどうするの?」
「しょうがないから、マグネシウムの塊から、機械で削り出すのだ。図面はあるから、コンピュータ制御の機械で彫り出すんだ。高いんだよ。」
「いくらぐらいするものかな。」
「5万円ではできないよ。」
というような会話だった。

 ポンプの羽根は鉄合金だ。冷却液は水溶液だから、中身があると冷却液を電解液とした局部電池ができる。鉄とつながっているマグネシウムが溶ける。そういえば、昔の電気温水器は鋳鉄の熱水タンクに保護用のマグネシウム棒が入っていた。5年に1度くらい取り換えていた。外したのを見ると、少し細くなっていた。その分は飲んでしまったり、風呂水になってしまったのだ。
 その後、マグネシウム棒を取り替えなくてもよいタイプになった。特殊ステンレスの電極を差し込み、それにプラスの電圧を掛ける。本体は鉄板製なのだが、それにマイナスの電圧を掛ける。するとマイナス極には電子が供給
されて還元サイドに傾く。ステンレス極は錆びないからそのままだ。電気が通じられている間は錆びない。これを電気防蝕という。
 さらにその後は、特殊なステンレス鋼で本体を作るようになった。普通のステンレスは使えない。水道の水には塩素が含まれているので、ステンレスの不働態膜を破壊するからだ。モリブデンとかニオブを含んだ高級なステンレスをつかう。この系統の合金は原発にも使われている。海水に耐えるステンレスが必要だからだ。
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