テフロン加工のフライパン

 月に一回の粗大ごみの集積場に、テフロンのフライパンが捨ててある。大体5,6枚である。はがれてくるから捨てるのだ。もったいない。約100世帯の町内であるから、おおよその平均寿命が計算できる。


 筆者の小学校4年頃、この種のフライパンが発売された。確か8000円くらいだったと思う。名古屋駅前の百貨店で初めてこのテフロン加工のフライパンを見た。ちょうど展示販売をしていたのだ。油を1滴も使わずにパンケーキを焼き、卵焼きを作る。不思議であった。「どんなものにもくっつかない」というのが謳い文句であった。

「今日はメーカーの人に来て戴いてますから、どんな質問でも答えて戴けますよ。さあご質問はございませんか。」とセールスの人が自信たっぷりで言う。観客は50人くらいだろうか。皆感心して見ている。
「ご質問がありましたら、遠慮なさらずにどうぞ!」と言うので、筆者は手を挙げた。
「ハイ、そこのボク、どうぞ!」
「テフロンには何もくっつかないんですか?」「そうです、先ほどから見て戴いているように何もくっつきませんね。」
「それじゃあ、テフロンはどうしてフライパンにくっついているのですか?」

 周りの大人は爆笑した。セールスの人は真っ青になって、メーカーの人の方を見た。メーカーの人はこれまた真っ青になって何も答えられなかった。
 筆者は「どうして答えてくれないんですか?さっきはどんな質問にも答えられると言ったじゃないですか。」と畳みかけた。観客はまたもや大爆笑である。
 結局、彼らは何も答えられず、観客の中には、「そうよねえ、テフロンがフライパンにくっついているというのはきっとウソよ。すぐにはがれて来るんじゃないの。」という人もいて、潮が退く様に観客がいなくなった。筆者が「どうして」としつこく聞くので、展示販売もできなくなった。

 
 それから10年以上経って、なぜくっついているかがようやく分かった。実はテフロンは引っ掛かっているだけなのである。フライパンには目に見えない無数の穴があけてあったり、研磨剤を空気でぶつけて、細かい傷を付けてあるのだ。そうしておいてテフロンを塗りつけると、その穴とか傷に引っ掛かって取れないように感じられる。しかし、過熱すると樹脂は劣化して、引っ掛かりが外れてしまうのだ。要するに、はがれて当たり前というわけだ。
 そのかけらを、誤って飲み込んでも吸収されないから、害にはならないが、嬉しくはない。普通の鉄のフライパンに油を塗って使うのがそんなに面倒なのだろうか。何十倍も長持ちするはずだ。
 そこが分からない。

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生成熱

  我が国の高等学校の教科書で熱化学のところを見ると、暗澹たる気分になる。ほとんどの本では燃焼熱が最初に来ている。その単位はkJ/mol である。それは間違っているわけではないが、不適切である。
 そもそも燃焼熱は実用単位で表されるべき数値である。mol という単位は日常生活には現れて来ない。燃焼熱は燃料として用いられる物質が燃焼する時、単位量当たりの発熱量である。例として挙げるまでもないが、天然ガスは約 40 MJ/m3 (25 ℃、大気圧)である。もちろん産地によって多少の差がある。石炭や石油の燃焼熱は、単位がトンであったり、kL (m3)であったりする。
純物質の燃焼熱は意味がない。諸外国の化学の教科書を見ると、燃焼熱は参考程度に最後に載っているものが多い。

 最も大切なのは生成熱なのだが、日本の教科書では後ろの方にあって、付け足しのように扱われている。生成熱の定義は、
化合物1molがその成分元素の単体から生成する時、出入りする熱量である。
 さらに細かく言えば、25℃、大気圧でという条件を付ける。その場合には標準生成熱
(standard heat of formation)と言う。また、単体は安定で豊富にあるものを、標準単体として選んである。
 水の生成熱は液体が生成する時の値が示してあることに注意せねばならない。25℃、大気圧では、水蒸気になることはできない。すべて凝縮して液体になる。

 生成熱の式には実現が不可能な式がたくさんある。
たとえば、グルコースの生成熱の式のように、単体のグラファイト、水素、酸素を反応させてグルコースが作り出せるだろうか。決して作り出すことが出来ないが、この生成熱は、単体を燃やして得た実験値を組み合わせて、容易に算出することが出来る。

 このようなわけで、各種の化合物の標準生成熱をずらりと並べた書物が市販されている。これをどのように使うかが、化学の初学者の勉強すべきことなのである。
 もし任意の熱化学方程式の反応熱を知りたいと思っても、その反応式を書物から探し出すのは至難の業である。もし、その反応式に登場する化合物の生成熱が一覧表で存在すれば、反応熱は直ちに算術的に求めることが出来るからだ。

 高等学校の教育現場でこれを教えられていない人たちが、かなり多数居ることが分かっている。センタ試験で生成熱の意義を確かめる問題が出題されるのに。

 繰り返して言いたい。生成熱は反応熱ではない。その意義を考えないと、熱化学を理解したことにはならないのだ。
 

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