平衡 と 定常

 よくある説明に、「大気圧下で水を加熱して100 ℃で沸騰させるとき、その水面では蒸発平衡が成立している」というものがある。

これは平衡ではない。平衡は二つの条件を同時に満たしていなければならない。
①物質の出入りがないこと。すなわち密閉容器中での現象を指す言葉である。
②エネルギーの出入りがないこと。即ちその密閉容器が一定温度に保たれている必要がある。
 日常生活で遭遇する事象の中で平衡が成立しているものは、性能の良い冷蔵庫に入れてある缶詰か瓶詰の中だけであろう。温度が変化するものは平衡が成立していない。

 1990年代の日本では、人口が1億3000万人になってピークを迎えるのはいつかということがよく話題になった。正月の国営放送の「新春討論会」なる番組を見て驚いたことがある。その予測は2002年ごろという話だったが、実際のところは減少速度が大きく、2004年に1億2700万人になったのがピークであった。
 その討論会の中で、「人口が平衡に達する」という表現がたびたび使われた。生命は不可逆的であるから平衡ということはあり得ない。この件について、国営放送には訂正をするよう申し入れたが、次の年も同じ言葉を使った。反省のない人たちである。
 もし人口が平衡なら、死んだ人が生き返らなければならないのだ。生命は不可逆的であって、生まれた人の数から死んだ人の数を引いたのが人口の増減である。増減が無いときを定常状態 Steady State と言う。
 化学での定常状態は、流入した物質およびエネルギーが、出て行くそれらの量と一致している状態を指す。お湯を沸かしている時がまさにその良い例で、エネルギーが注入されて、水が水蒸気になって逃げ去る。水は減るので時々継ぎ足さなければならない。

 最近の生物系のけしからぬベストセラー本の中で「生命の動的状態(dynamic state)」という概念を拡張し、生命の定義に動的平衡(dynamic equilibrium)という概念を提示した」と主張する本があった。ご丁寧にも熱力学第二法則がどうのこうのと書いてあるが、不勉強を曝している。生命は定常状態であることがわからないのだ。言葉は大切である。知らないことは書くべきでない。

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気体の溶解度

 気体の溶解度は次のように表す。気体の圧力が大気圧の時、溶媒1Lに溶ける気体の体積を、0℃、大気圧の気体の体積(L)に換算して表している。これをブンゼン係数と言うが、最近はこの名前をあまり聞かない。

 この方法はなかなか良く出来た方法で、気体の体積を調べる形をとっているが、よく考えるとその値を22.4で割れば、それは"mol"そのものである。要するに気体の溶解度をモルで表したいのだけれども、モルでは実感がないので、体積の形をとっているわけである。

 気体の量ははモルで表すのがベストなのだが、普段の生活にはモルは全く出て来ない。例えば、料理番組で、「次に食塩を0.5モル加えます…。」などとは言うはずがないのだ。すなわち実感が伴わない。
 それでは気体の質量を測定するのは、これまた難しい。なぜかと言うと、風船に気体を入れて秤に載せると浮かび上がるものもあるからだ。空気中の浮力は無視できないほど大きい。
 それでは体積ではどうだろう。体積は見れば分かるので都合がよいが、圧力または温度を変えると大きく変化してしまう。だから、温度、圧力を決めたのである。0℃、大気圧なら、全ての気体は22.4Lを占めるので、22.4で割ればモルそのものになる。これは便利だ。

 気体に限らず液体の体積も、温度によってかなり変化するものがある。スーパーマーケットで醤油を買うときはml単位であるが、サラダ油はg単位である。水ベースのものは膨張係数が小さく、変化が無視できる。しかし、油ベースのものは温度により体積が無視できないほど変化するから、客とのトラブルを避けるためにこうしているのだ。
 ガソリンは体積を測って売っている。ガソリンの熱膨張率は大きいので、冬の方が得のように思えるがそうでもない。ガソリンは地下のタンクに貯蔵されているので、いつも18℃くらいで出てくる。しかし、夏の日差しの中で、はやっていないガソリンスタンドで給油することを想定すると、損かも知れない。初めのうちはポンプの温度が上がっているので、最初の数Lは多めに測られてしまうからだ。

 都市ガスはどうだろう。ガスメーターは外にある。カンカン照りの時はメーターは熱くなっているから、ガスが膨張して多めに測られて損である。
 しかし冬には逆でかなり得をするはずだ。一般的に冬の方が使用量が多いので、年間を通じて考えれば損は無いと思う。

セイタカアワダチソウ

 犬の散歩に行ってセイタカアワダチソウの群生地を横に見ながら歩く。そこは、以前筆者がある実験をした場所である。

 30年ほど前、セイタカアワダチソウだけが繁茂するのは、その根から他の植物の発芽を抑制する物質(アレロパシィ Allelopathy)として三重結合を3つ持つカルボン酸のメチルエステルを分泌しているからだということが分かった。そのニュースをアメリカの雑誌で読み、これを抽出すればほとんど害のない除草剤が出来ると思った。

 先ほどの場所とは異なる所でセイタカアワダチソウの群生地を見つけたので、たくさんの根を集めて干し、それから溶媒抽出した。ある程度濃縮して保存し、それを薄めて散布することによって雑草が生えて来なくなるはずである。

 毎年その散布実験を色々な場所で行った。比較のために隣の場所では散布せず、様子を観察した。うまく行けば商品化出来て、多少の利益があるかもしれないという期待感で一杯であった。
 結果は上々で、かなりの発芽抑制効果があるように思えた。

 次の年、大量に用意した液を空き地にばらまいた。目印に短い杭を打って様子を見た。一般の草は生えて来なかった。これは大成功だと喜んだ。
 ところが驚くべきことに、そこにはセイタカアワダチソウのみが生えてきたのだ。それまではセイタカアワダチソウはまばらに生えていて、あまり気にもならなかった。
 その薬物をほんの少し撒いただけで、他の植物が発芽しにくくなったが、セイタカアワダチソウだけは影響を受けず生えてきたというわけだ。

 その時のショックは忘れられない。よく考えてみれば当たり前のことであるが、その時は夢中で気が付かなかったのだ。

 その後、アレロパシィについてはずいぶん研究が進んだようだ。セイタカアワダチソウでさえも何年も繁茂することは無い。それはこの物質が蓄積するからだという説がある。また、作物の連作を妨げる作用もある。農家の人に聞いた話ではナスの隣にネギを植えると虫が付かなくなるという。
 アレロパシィの関係は植物同士のみならず、動物に対しても言えることのようだ。

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