冬至

 今日は冬至であった。日照が少なかったので愉快ではなかった。毎年、冬至の南中時(11時半ごろ)に日差しの深さを確認する。今年は日中、陽が陰ってしまい、全ての床面に陽が差すのを確認できなかった。
 一回やれば済み、のはずであるが、それを確認するのが年末の楽しみの一つであった。

 我が家はひさしの位置をずいぶん細かく計算して決めた。我が家は北緯35度であるから、冬至の日には太陽の光は32度の角度で降り注ぎ、全ての床面を温める。夏至の日には、78度の角度であるから、日射は全く入らない。その前後も朝夕はガラスの全半射の角度内であって、光は入らない。
 南面のガラスの高さは5mほどもあり、近所では有名なガラス張りの家である。南面の60%強がガラスというのは珍しい。

 ガラスは二重であるのはもちろんだが、隙間にアルゴンを入れ、ガラスには薄いスズめっきを施してある。外から見ると青みがかった銀色のガラスである。アルゴンは空気よりも拡散速度の小さなガスである。本当はもっと重いキセノンを入れたかったが、価格を調べて驚いた。ガラスの価格と同等以上であった。仕方なくアルゴンにした。重い分子なら対流速度がずっと小さいはずである。

 スズめっきは極めて薄く、いわゆる干渉膜の一種である。これは波長の長い遠赤外線は反射するが、近赤外線、可視光線はよく通る。

 夏の日を考えてみよう。いくらひさしを長くしても、太陽光は近所の屋根に当り、それを70℃ほどに温める。それが発する遠赤外線は普通のガラスを容易に透過する。一般家屋では、いくらエアコンの効いた部屋でも、窓際に行けば外から飛び込んでくる輻射熱をガラス越しに感じる。冷房時のこの損失は大きい。それを80%強はじき返せば、冷房費はかなり節減できることになる。

 冬の日、外は零下であるとする。室温は24℃であると、室内から発する遠赤外線はガラスを透過して逃げてしまう。これはバカにならない量である。それをスズの干渉膜で90%程度反射出来れば、損失は大幅に少なくなる。日中は太陽からの近赤外線をよく通すので、家の中は暖かい。その熱を床のコンクリートと壁の煉瓦に蓄えるのだ。

 このようなシステムをPassive Solar Houseと言う。1980年代にアメリカで研究が進んだ。当時、筆者はアメリカに居たので、この種の家を研究した。いくつかの実例を見て、改良点を探し、日本で建てたのだ。Activeなソーラーハウスもあるが、それは壊れやすい。台風が来たりすると、風圧でダクトなどがあちこち壊れるような設計が多かったので、それは最初から採用しなかった。

 宅地を求めた時、南面に大開口部を設けられるかだけを考えて、道路の向きとは少しずれた向きに建てた。住宅を真南に向けるためだ。航空写真を見ると我が家だけが少し変わった向きに建っているからすぐ分かる。
 それを見て、父がぽつりと言った。
「おまえは昔からこうだった。小学校でも一人だけ違う方を向いていたぞ。」

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Geo-Thermal

 いよいよ総選挙で、原発維持、脱原発の論議がかまびすしい。不思議なのは、どの政党も「地熱発電を強力に推進する」という公約を掲げないことだ。

 アメリカの西部に行くたびに気になっている場所がある。カリフォルニア州とネバダ州の境に湯気が噴き出している、いかにも火山地帯というところがある。近くに行くと、送電線がたくさんあるので発電所であることが分かる。
 友人に聞くとあの施設は日本製であると言う。
「日本には地熱発電所がたくさんあるのだろうね。」と聞くので、「無いことはないが、少ない。」というと不思議そうな顔をする。

 日本には、大量の天然資源がある。それは地熱である。非常にラフな見つもりであるが、全てを利用すると、日本の必要とする総エネルギィの200%以上があるそうだ。
 日本には地熱発電の技術があり、それを諸外国に輸出している。アイスランドでは総エネルギィの100%近くが地熱である。その他の国にも日本製の技術がたくさん輸出されている。ところが、お膝元の日本には少ない。

 国立公園内にあるからという言い訳があるが、それが景観にどういう影響を与えるのだろう。この非常時に、お題目を唱えていて良いのだろうか。「温泉が枯渇する」と大きな声で温泉業者が反対するが、枯渇した例があるのだろうか。
 国立公園法を改正し、地熱発電を推進すべきである。被害に対しては補償するということで、国民の同意は得られるはずだ。温泉業者は既得権益の上に乗っかって、国民に無駄な出費を強いているという見方もできる。

 筆者は地熱発電には昔から興味がある。1960年代に、「子供の科学」という雑誌に小規模ながら地熱発電所が出来たという記事が載った。それを見て石油を輸入しなくても良い時代が来るかも知れないと、子供心にも期待したものだ。
 せっかく持っている技術を活用すれば、今ある原発のうち、安全に使えそうなものだけを使って、徐々に縮小させることができるだろう。初期コストの高い太陽光や、その他の自然エネルギィに比べ、はるかに安く、安定な供給が可能になる。また、原発のように外国からの攻撃やテロに対する防御も不要である。新政権が地熱発電を強力に進めるよう、国民の側から声を上げるほかない。

 ところで、昨年テキサスの友人のところを訪ねたら、彼が経営する博物館の空調がGeo-Thermalを使っているというので、驚いた。テキサスは産油地で、彼も油田を持っている。それなのにGeo-Thermalを導入したのだ。
 かなり大きな博物館を空調するのに、地下30mまで11本の井戸を掘り、そこに水を送って戻す。その深さの地温は15℃くらいで一定であって、夏季の空調コストの削減に貢献する。彼の試算によると75%の削減で11年で元が取れるそうだ。日本のように電気代が高いところでは、もっと短い期間で償却できるであろう。冬も外気に比べて温かいので、暖房コストを大幅に削減する。
 普通の空調設備には外に大きなファンを廻す装置があるが、そこには無い。水で熱交換を行っているからだ。「騒音を出さないから良いのだ。」と彼は言うが、砂漠の中だから説得力はなかった。

溶ける手術糸

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 最近、思わぬことで目の手術を受けた。翼状片という結膜の異常が起こったのだ。これは日照時間の長い低緯度の住民に起こりやすいとされている。そして、紫外線が原因だということになっているそうだ。屋外で長時間仕事をする人によく発症することが分かっている。また、目の外側よりも鼻に近い方に出来る例がほとんどだ。その原因は鼻によって紫外線が反射されるからだという人もいる。だから鼻が高い人ほどなりやすいということも言われている。そのような人は鼻を黒く塗るのが良いかもしれない、というのは筆者の冗談で、眼科の先生は大笑いされた。

 翼状片が大きくなると視界が欠けて、しまいには見えなくなるから、その前に取る必要があった。瞳に掛かると、取っても角膜の表面が荒れて視力が大幅に低下するからだ。
 友人の紹介で、その種の手術の名人と評判の高い先生に診てもらったところ、有無を言わせず「昼休みに取ってあげましょう。」ということになった。

 あっという間に手術台に縛られ、局所麻酔を掛けられた。目の手術は、何もかも見えてしまうところが怖い。注射をするというので腕だと思ったら、眼球にプスリと針を刺された。もちろん事前に点眼麻酔が掛けられているので、全く無感覚ではあるが驚いた。その注射はキシロカイン(英語ではザイロケインと発音する)で、何をされても感じなくなった。メスを持って切り込んでくるのが丸見えでびっくりしたが、すぐ慣れた。ザクザクとはがし取って、穴をそのままにするわけにいかないので、結膜を別のところからはがし取って移植する。それは眼球の上の方から取るのだ。ゾリゾリとはがす音が聞こえて数ミリ角を取り、それを患部に縫い付ける。結膜欠損部は、増殖して塞がる。

 糸がしばらくゴロゴロするだろうが、そのうちに溶けるから抜糸に来なくて良いということであった。それはいわゆる「溶ける手術糸」である。数日で違和感が全く消え、10日で痕跡まで無くなった。
 手術した次の日に見たところ、縫い目がはっきり見え、結び目が出ていた。痛いのは当たり前である。しかし処方された鎮痛剤を飲むと、睡眠薬も入っていて、よく寝られた。眼帯の下のガーゼは涙を絞れるほど、よく涙が出た。2日間1L以上は出たと思う。下痢と同等であって、脱水症状が起きそうであった。したがって多量のナトリウム、カリウムを含む水を取った。

 その涙には、糸が溶けて出来た乳酸が入っているはずだ。調べたがそれほどpHは低くない。もちろんそんなに多量の乳酸が一度には出ないのだろう。

 外科医の友人に聞いたところ、その種の糸はポリ乳酸を代表とするポリグリコール酸で出来ているそうだ。溶ける速度は各種あって、今回のように数日で溶けてしまうものから、最大6カ月も掛かって溶けるものまであるらしい。昔は絹糸や動物の腸から作った糸を使っていたらしいが、それらは溶ける前に異種のタンパク質として、拒否反応が起きた。すなわち必ず抜糸をしなければならなかった。
 また、体の外部の縫合には、最近はナイロンのモノ・フィラメントを用い、溶ける糸は使わない。強度が足りないからである。モノ・フィラメントとは、髪の毛のように1本丸ごとが糸になっていて、組織とくっつかないから、抜くときあまり痛くない。
 昔は絹糸を鍋で煮ながら縫った。それは組織とくっついてしまうので、抜糸すると、直径1.5mm位の穴が開いて、血がかなり流れ出た。それを思えば楽になったものだと感心した。
 また、絹のように繊維を撚って作った糸は、その隙間に白血球が入って行けないので化膿する惧れがあったそうだ。確かに、表面が滑らかであればその心配はない。

 手術用の糸は、もう一つ大切な性質を持たねばならない。結びやすく解けにくいことが要求されるのだ。その点についても、最近の合成糸は素晴らしい性能を持っているそうだ。

(写真は翼状片の例)

布団を干す

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 我が家は布団を干さない家として有名であるらしい。新築して引越した時、近所の人から、「洗濯物をどこで干すのか」とか「布団干し場はどうするのか」という質問を多数受けた。
 洗濯物は乾燥機で干すと答えたら、そんなのは贅沢だと言う。そうでもない。我が家は深夜電力を安く買う契約をしているので、一回の電力費はせいぜい50円強で、週に約二回であるから月に500円弱であろう。アメリカ製の大きな5.4KWの機械なので短時間で終わり、衣類の傷みも少ない。

 昔アメリカに居た時に、借りている家の中の埃が少ないのはなぜか、考えた。全室を一つのエアコンで空調し、途中でフィルタで漉しているのも一つの要因だが、衣類を乾燥機で乾かしているのが大きいことに気が付いた。乾燥機のフィルタにはかなりの埃が引っ掛かる。だから、衣類から落ちる埃が少ないのである。もちろん乾燥機の排気は煙突で外に出す。部屋を掃除機で掃除する手間と電気代を考えれば、乾燥機による乾燥は安上がりである。また、日光による褪色の問題もない。さらに、乾燥機作動時に柔軟剤を滲み込ませた紙を投げ込んでおくと、それが全体に行き渡って、しなやかな洗濯物になる。とても快適だ。

 次は布団を干す話である。布団を干さねばならない理由は何だろう。それは布団が湿るからだ。

 なぜ湿るのだろう。

 夜間の家の中の温度はそれなりに低くなる。暖房を止めれば10℃くらいまで下がるかもしれない。体温は36℃で、布団の厚さの中には温度勾配が生じる。体から出た水蒸気は布団を通過するが、温度が下がるとあるところで結露するだろう。その位置は露点温度と温度勾配の交点である。すなわち布団は湿る。干さないとカビが生えたりする。
 露点温度に到達しなければ、水蒸気として布団を通過し、室内に拡散する。どうすれば良いかは、すでにお分かりだろう。室温を露点温度以上に保てば良いのである。

 我が家は高気密・高断熱・高断湿の家である。また、熱容量が極端に大きな家なので、日中の太陽熱を保持しているから、特に暖房しなくても夜間の気温が20℃を割ることが無い。すなわち、年中薄い布団を使っていて、その布団は決して湿らない。だから干すこともない。もちろんシーツ類は定期的に取り換え、シーツの下のベッドパッドも良く洗う。これだけで非常に快適だ。また年中、湿度を低く保っているのもカビが生えたり、ダニが発生したりするのを妨げている。 

 普通の家で夜間もこの温度を保つと、湿度が下がって不愉快である。それは壁を通って水蒸気が逃げ、壁の中で結露している可能性が高いからである。冬の朝、土台を見て回って、水が垂れていればそれは壁内が濡れている証拠である。壁、天井、床の室内側に完全な防湿膜を付けない限り、室内の空気は乾き続け、家は腐る。この防湿膜を完備している家は、日本にはほとんどない。
 室内が乾くからと言って、加湿器を作動させると、それは壁を腐らせる水を供給しているに、他ならないのだ。家の寿命を極端に縮めるだろう。


《先回の褪色した看板の写真の意味が分からないとおっしゃる方が多かった。目を凝らせばかろうじて赤が残っているのだが、やはり見えにくい。この写真の現場近くに住む友人がコンピュータで画像処理したものを送ってくれた。赤を強調してあるのでこれなら良く見えるだろう。》 

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