金属の臭い?

 先日、ある生徒さんから質問があった。
 10円玉には特有の臭いがあるし、他の金属もそれぞれ臭いがある。それはどうしてか?というものである。

 これは金属の臭いではない。手で触った時の汗、手垢と金属が反応して生じる何かの臭いである。新しい10円玉を手に入れ、歯ブラシと洗剤を使って良く洗う。表面の汚れを完全に取って手を触れないようにして乾かす。それをピンセットで挟んで臭いを嗅いでも、全く臭いはしない。
 ところがそれに脂ぎった鼻の頭になすりつけて、30秒後に臭いを嗅ぐと特有の臭いがする。鋼や亜鉛めっきの表面も同じような反応が起きる。

 どんな反応が起きているのか、しかとは分からぬが、比較的分子量の小さいものが生成するのであろう。そうでなければ臭いにくいはずだ。おそらく、皮脂の中に含まれる脂肪酸の二重結合が切れる反応が起こっているのではないかと思う。

 金属は単体でも、酸化物でも触媒になりうるであろう。鉄工所に行くと鉄と切削油との反応で独特の臭いがする。これはどの鉄工所も同じ臭いである。

 電鉄会社で電車のモータを整備する人たちから聞いた話である。銅がたくさん含まれているカーボンブラシ(電気を導くブラシには炭素と銅粉末を焼き固めたものがある)をやすりで削って修正していると、口の中が甘くなってくると言うのだ。やってみると確かに不思議な甘味を感じる。銅の微粉末が口に入ると微量の銅イオンを生じ、それが味覚細胞を刺激しているのだろう。

 やってはいけない実験に酢酸鉛水溶液の味見がある。これは、どうかなりそうなくらい甘い。昔ローマ帝国の貴族は、鉛の杯で古くなったワインを飲んだそうである。古いワインにはエタノールが酸化されて生じた酢酸が含まれ、空気中の酸素が酸化剤として働いて鉛を溶かした。すると極端に甘くなり、それを回し飲みして楽しんだらしい。
 その結果、たくさんの貴族は鉛中毒になって早死にしている。

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Derivative

 日本語では経済学用語としてデリバティブで通用する時代になった。新聞の経済面にもよく載っている。もともとは動詞 derive の名詞形である。この言葉は「取り出す、手に入れる、~に由来する(受動態で)」という意味であった。
 化学の世界では「誘導体」という言葉に翻訳された。例えば、「サリチル酸はフェノールの誘導体であるという。」

 先日ワシントンDCの弁護士の友人が"derivative case"と言ったので、どきりとしたが、それは「株主代表訴訟」という言葉であった。サイエンスの言葉ではない。

 数学では導関数の意味である。関数から取り出されたエッセンスということだ。"derived function"とも言う。
 微分法を考え出した人は偉い。高校二年生の春、微分の原理を習ってその素晴らしさに感動した。
家に帰って天井を見つめ、天井に色々な関数を投射し(もちろん頭の中で)近接する二点を結ぶ線分がその中点の接線と傾きが等しくなることを何度も確認した。

 整式だけではなく逆数でも次数の符号を替えてやればできることが当然分かり、他の関数でもできるかどうか確かめたくなった。
 30分くらいで三角関数も微分できることが分かり、サインはコサインになった。妙に感動して、それでは対数はどうだろうということになった。かなり苦労したが逆数になることが分かった。
 こんなことに気がついた奴はいないだろうと(この辺は幼い高校生の頭である)結論を紙に書き、翌日数学の教師に得意そうに見せた。
 そうしたら、その伊藤という教師は、「ああそれは3年でやるから今は考えなくても良い。」と言ったのである。

 習ったのではなく、定義だけから導き出したのであるから、少しは褒めるべきであったと今でも思う。教師の不用意な一言で、数学に対する興味が一瞬にして崩れ去った。もしその時、「えっ、これをお前一人で導き出したのか?君は天才かも知れん!」と言ってくれたら、数学者になったかも知れない。
 教師は知識を伝達するのが仕事ではない。生徒の可能性を発見し、その能力を伸ばすのが仕事なのだ。

 筆者が教師業を選んだきっかけのひとつはこの事件である。生徒さんが色々なことを質問に来るが、原則としてその着想を褒めることにしている。


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昨日帰国した。時差ボケになやんでいる。歳をとってきたので、調整には時間が掛かるだろう。若いときは3日で直った。しかしもっと若い赤ちゃんはそのリズムがなかなか直らない。大脳のはたらきが時差を補正しているのだ。
 
 

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