続 逆浸透

 日曜日に教会に連れて行かれた。異教徒ではあるが、いつも、そこでの出会いに面白いものがあるので、付いて行ったのだ。市の水道の元締めがいたのでしばらく話し込んだら、面白いことを聞かせてくれた。
 
 その町には二つの水源がある。東の湖の水を長らく使っていたが、町が西に発展したので西のほうに人工池を作って、第二水源地とした。ところがその西池の水質が極端に悪く、通常のろ過、塩素投入ではとても飲めない状態であったそうだ。塩素を増やすと苦情が来た。そこで逆浸透装置を導入したのだそうだ。

 効果は抜群で東の水源をはるかに凌ぐ高品質の水を供給できるようになった。問題は微生物の除去であったそうな。ろ過フィルタは砂とその上に生える藻を使うのだそうだが、その環境では良い藻が定着しなかったのだそうだ。砂漠の中でそこだけ水があると、いろいろな生物が水を求めて定着し、繁殖する。要するに生態系が狂うのだ。そのために、その水中に繁殖する微生物の量が多過ぎたようだ。水の味は、専らこの植物性プランクトンが多いとまずくなることが分かっている。カビ臭くなるのである。したがって塩素量を増やすとますますまずくなるということだ。

 逆浸透と言ってもいろいろなレベルのものがあり、その水道システムで採用したものは小さなイオンまでは除けなくても、ある程度の大きさの分子や、微生物は簡単にほぼゼロにすることが出来るそうだ。それでよいのだ。

 それなら、この家は市の西部にあり、逆浸透処理水を使っているはずなので、余計にこの装置は不要であると感じた。道理で水道の水が美味しいわけだ。ワシントンDCの水はまずかったが、ここの水道水はそのまま飲めるのは不思議だと考えていたところだ。

 大きな沈殿池やろ過池が要らなくなったそうなので、これは日本のような人口稠密な国に適すると思った。上水道の浄水場は高級住宅地の奥にある場合が多いように感じる。
 それを縮小して売却すれば地方公共団体の財政に寄与するのではないかと、勝手なことを考えた日であった。

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逆浸透

「台所で水を飲むときは、このレバーを押すと美味しい水が出るから、こちらを使え」と言われた。聞けば、逆浸透を用いた最も新しい浄水装置をつけたとのことであった。

 それを聞いて筆者の頭に浮かんだのは、すべてのイオンを通さない、かなり高級なものであった。動力は電気ポンプを使うのだろうと、勝手に予測して、流しの下を見せてもらった。
 そこにはプレ・フィルタが3本あり、それでゴミ、塩素、イオンなどを順次抜いて最終的に逆浸透を可能にする極小の穴をもつ半透膜に至るようになっていた。
 かなりの期待外れであった。水道の水圧(8気圧くらい)だけで逆浸透を起こさせようというのだから、原水の濃度はかなり小さくなければならない。また、水の流出速度はかなり小さいはずなので、それをどのように克服しているかも興味があった。

 付属の説明書を見て、データを読んだ。塩素はほぼ完全に取れている。ラジウムを吸着するイオン交換樹脂がプレフィルタに入っているらしく、ほとんど通さないとある。ナトリウムはあまり取れていないが、1/3にはなっている。しかしカルシウムの記載が無い。あれば大きな吸着度合いを示さねばならない。

 ここが問題である。一般的に言えば、価数の大きいイオンはそれが少ないイオンよりイオン交換樹脂に吸着されやすいはずなのだ。しかし、それはプレ・フィルタにおける話で、逆浸透が本当に起きていれば、本当の純水になって出てくるわけで、ナトリウムが出てくるのはおかしい。

 プレ・フィルタは6ヵ月毎の交換で、逆浸透膜は2年で交換らしい。
 
 何度もマニュアルを読んだが怪しい話ばかりだ。カリフォルニアの公的機関の分析証明書の写しが付いていて、権威付けはなされているが、マユツバ的な話である。

 友人の奥さんに聞くと、水の味が良くなったから満足していると言うことだが、それは塩素臭が無くなったからで、活性炭のプレ・フィルタだけでも十分だ。大枚300ドルで買ったようだが、見事にだまされているように思った。多少の逆浸透効果があるという程度だろう。
 実は本物であれば買って帰ろうと思ったのだ。昔、NASAで見せてもらった本物は、尿をいれると3分でほとんど同量の水が得られ、すごく感動した。
 飲んでも何も感じなかった。自分の体温以外は。

不導体と導体

 10日ほど前から、アメリカに来ている。ワシントンDCの近くで参加しなければならない行事があり、その後テキサスの友人宅に来た。友人は精密鋳造業(要するに貴金属のブローチなどを鋳造している)を営んでいる。
 電気炉の漏電について相談があった。電気炉が冷えているときはきわめて高い抵抗を示して、全く漏電しないのに、内部が赤熱して1000℃以上になると漏電するのは、どこに問題があるのかと。
 これと同じ質問を、窯業を営む日本の友人からも聞かれたことがある。

 答は簡単である。いわゆる絶縁材はガラス質のもので無機物質(酸化マグネシウムや酸化アルミニウム等)を固めたものである。ガラスは温度が高くなると電気抵抗が小さくなるのである。すなわち普通の絶縁体は、高温では必ず漏電する。高温のガラスの中では、イオンが多少自由に動くのでかなりの伝導性を示すのである。

 実は20年ほど前のセンタ試験でこの問題は出ている。「ガラスを高温にすると電気伝導性が増す」という文章の正誤を問う問題が出ているのだ。当時はかなりの生徒がこの出題には驚いた記憶がある。それから時間が経ち、忘れ去られた問題となったが、現実の問題として目の前に現れたのであった。

 結論としては赤熱しているときは漏電は当然であるから、触らぬようにすることである。赤ランプを点滅させて、扉を開けるときには通電を一時的に止めるように進言した。彼は理屈が分かったので感謝していた。絶縁体をガラス質ではないマイカ(雲母)などにするとかなりの電気抵抗を高温でも保つが、使いにくい。

 筆者の家には大型の電気オヴンがあった。昔アメリカで安く買って持ち帰ったものである。使用を始めて、高温時に漏電するという現象に気がついた。
 まさに同じ現象である。電熱線を太い金属管に入れてその隙間にガラス質の絶縁物質が入れてあった。たまたま配合が悪くガラス質が多かったのであろう。
 買った店に行って、電熱線を取り替えてくれと言うと、絶縁計を持ってきて計り始めた。「2 MΩ あるから問題ない。」と言う。「それは冷たいときで、熱いときは 250 kΩ しかなかったぞ。」と言うと、「理屈はよく分からぬが、あなたは専門家のようだから、この中で好きなものを持って帰れ。」と言う。
 持参の大型の絶縁計で測定し、常温で 10 MΩ あるものを選び、持って帰った。

 取り替えてみると、赤熱時でも漏電は見られなかった。しかし、1 mA 程度の電流は漏れていた。その程度では感じないのである。一般的に人間は 500 mA 程度の電流で死ぬらしい。
 接触抵抗の問題があるので、塩水で濡らすと 100 V 程度でも致死的である。 200 V ではまず即死する。

 普段の乾いた皮膚では 100 V の線に触れてもまず大丈夫である。 このオヴンは 200 V 三線式であったので、接地からの電圧は 100 V である。しかし台所では濡れた手で触ることもありうる。また冷蔵庫は接地してあるので、それにもたれて触ると 100 V が直接人体に掛かるのである。絶縁抵抗は大きくなければならないのだ。

 いろいろと手間を掛けて設置したオヴンであったが、20年の使用で制御回路が壊れて廃棄した。制御部分が壊れると火事になる可能性があるからである。新たに同サイズのものを輸入して取り付けた。さすがに20年間の進歩は大きく、その使い勝手の良さには驚いた。

 このサイズのオヴン(内容積が110リットルほど)の国産品はプロ用しかなく、異常に高価である。空輸しても輸入品のほうがはるかに安い。ただしアメリカは 60 Hz の国なので関東以北では使いにくいだろう。筆者には、たまに大きなオヴンで焼かねばならないことがあるのだ。

 

電子レンジ

 英語では microwave oven と言う。極超短波炉ということになる。2.45 MHz の電磁波を照射する装置で、その波長は 120 mm 程度である。扉の窓の金網は細かいので、外に電磁波は漏れない。
 レーダの研究者がポケットに入れていたチョコレート菓子が融けたことから、マイクロ波で加熱することが出来ることが認識された。電磁波中ではプラスとマイナスの波が交互に来るので、その中に置かれた極性物質は激しく振動し発熱する。共振すると書いてある本もあるが正しくない。共振振動数はもっと高いはずである。
 
 電磁波が放射される角度は意外と狭いので、小さな箱の中では電磁波の強度に「むら」があり、うまく均一には加熱できなかった。そこで羽根を廻して電磁波を拡散させる方式やターンテーブルを設置して被加熱物を回転させる方式が生まれた。
 
 ここで一つ問題を。食品をターンテーブルのどこに置けばよいのだろう?
 あちこちの家庭でその操作を垣間見るが、ほとんどの場合、中心に置くようだ。それでは、回転させる意味が無い。
 なるべく中心から離れたところに置くべきである。そうすれば電磁波が直接当たらず、あちこちに反射して均一に加熱される。

 電磁波は何ミリくらい滲み込むのであろうか。これは筆者の実験では 12 mm と測定される。
すなわち厚さ 24 mm の冷凍肉を加熱することができる。この時は皿を 3 cm ほど浮かせて、下からも電磁波が当たるようにせねばならない。

 1960年頃電子レンジがNHKTVで紹介された。その時の様子を今でも克明に覚えているが、「厚い肉でも内部から加熱される」という表現をした。それは明らかに間違いであって、エネルギィは外から伝えられるので、「外から加熱される」と言うのが正しい。筆者の世代はその刷り込みが強く、今でも内部から温まると信じている人がいるようだ。

 アメリカでの訴訟で、濡れた猫を電子レンジで温めたら死んでしまい、訴えられて損害賠償金をメーカが払ったという話がある。日本では「とんでもない訴訟があるもんだ」という論調で引用されることが多いが、アメリカではそうではない。
 濡れた猫はオーヴンで温める文化があるのだ。もちろん適温にして入れてやるのだが、猫は嬉しそうにしている。だから、同じように温められると信ずるのも無理からぬことであるのだ。 

[追記]
 氷に少し水を掛けて濡らすと電子レンジで融け易くなる。乾いた氷よりはるかに融け易い。濡れているのだから0℃である。もう一つの乾いた氷は0℃より多少低いのかも知れないが、その分を見込んでも融け易い。液体の水は電磁波を吸収しやすいのだ。
 コメントの「砂漠」さんのご意見はこのことを指しているのかもしれない、と思ったので追加する。

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