アスファルト乳剤

 最近町内会の人たちと一緒に、町内の道路舗装の補修をしている。たまたま多少の知識があって、試しにやってみた。うまく行ったのを町内会長が見て、指導を頼まれたというわけだ。

 アスファルト舗装はひびが入る。その原因は夏冬の温度差が大きい。夏に伸びて冬には縮む。幹線道路のように舗装が厚ければ、それは厚さ方向の変化になるだろう。しかし、生活道路では舗装が薄く、割れてしまう。
 割れを放置すると、そこに周りの舗装材が落ち込み、だんだん割れ目が大きくなる。幅が1cm程度の時に補修すれば、資材も少なく、仕事量も少くて済む。市に補修を申し入れてもなかなかやってくれないので、資材だけを市から受け取り、手間は町内会の有志で賄うということにした。隔週で1時間半ほどの作業に、色々な人が出て来る。その人たちと話をしながらの作業は意外と楽しい。

 砂にアスファルトを混ぜたものを補修材として市販しているので、それを使う。それを割れ目に押し込んで大きめのハンマで叩くとたちまち固まる。それだけでは接着力がやや不足するので、あらかじめ割れ目の中にアスファルト乳剤というものを少量入れておく。
 
 昔はアスファルトを加熱したものを、圧力を掛けて噴出させていた。それが軟らかいうちにアスファルトをまぶした砂をならすのだ。これは見るからに素人では難しく、出来ないものと思っていた。ところがアメリカで手に入れた石油製品関連の本を読んでいたところ、この難しい工程を非常に易しく出来て、また同等の性能を発揮するものが開発されていることに気が付いた。

 それがアスファルト乳剤である。加熱したアスファルトに数パーセントの水と界面活性剤を混ぜて分散したものである。見かけは融けたチョコレートだ。粘度は低くシャバシャバしている。
 これを塗布して10分も待つと水が蒸発してアスファルトそのものになる。ねばねばで、補修材がよく付く。詰め終わってからさらに掛けるとつるつるに仕上がり、プロの仕事のようになる。

 このアスファルト乳剤はマヨネーズのようなものである。マヨネーズを皿に薄く塗ってしばらくすると、水が蒸発し油が残る。乳化剤のレシチンは少量だから目立たない。油になってしまったマヨネーズはもう水には溶けないというわけである。

 アスファルトを乳化する界面活性剤は何を使っているのだろう。かなり強力なものだ。
 固まった後は当然雨にも溶けない。しかし、一度だけ失敗がある。施工し終わった瞬間、激しい夕立に襲われ、アスファルト乳剤が水で洗い流されたのだ。夕立が去ったあとは、見事に砂だけになり、非常に悔しかった。その後は天気予報をよく見て作業をすることにしている。

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Rationalist

 中谷宇吉郎の文章を読んでいて、次のようなくだりにぶつかった。

「科学者を英語で言うと何であろうか。」である。当然Scientistという言葉を思いつくのだが、彼は"Rationalist"という言葉であるべきだと述べている。
 それを日本語で言うと合理主義者である。

 合理主義者の定義を、誰かの本で読んだが、「客が来たときに茶碗が足らなくなったら、猫のえさ入れを持ってきて洗って出すような人」とあった。なるほどとも思ったが、さすがにこれをやる人はいないだろうと思った。

 現在、合理主義の定義せよと言われたら、「常識、伝統、慣習などにとらわれることなく、効率的に目的を達成しようという方針をとること」であろう。
 中谷宇吉郎の本を読むと、その方針がありありと見える。さぞかし色々な人たちとトラブルがあっただろうと思う。しかし彼はひょうひょうと生きている。

 彼は物理学を極め、それを応用して雪の生成過程を突き止めた。そして、それ以外にも物理の応用例を探して、それを実用化していく様子が描かれている。
 

 Rationalistというのはよい言葉だ。筆者もときどき使っている。  

中谷宇吉郎を読む

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 中谷宇吉郎は雪の研究者として世界的に有名になった物理学者である。寺田寅彦の弟子であり、夏目漱石の教え子でもある。
 叔父の遺品整理を頼まれ、蔵書を処分した。大半の本はもはや価値のないものであったが、この本を見つけた時は嬉しかった。昭和13年の初版であるからもう70年以上前の本である。

 筆者は寺田寅彦の文章には心酔している。まさにプラグマティック物理である。その弟子であるから、文章は同じタッチで語りかけて来る。

「日本には自然科学が根付かない」ということを書いている部分があった。70年経っても、先日の原発事故を見ればそれがよく分かる。マスコミ関係者には読ませてやりたい。
 焼物を作るとき、釉薬が融けて流れる具合がなかなか難しくて、何百も作っても、良いものは一つか二つであるということを聞き、不思議そうに書いている。
 温度計を入れて、温度を少しずつ変えながらたくさんのサンプルを焼いて、その中で成功したものを再現すればよい。どうしてこのようなことができないかと書いているのだ。

 今でも全く同じことを言う人がいる。焼物を作っている人が「焼いてみなければ分からない。」とテレビカメラの前で言うと、それに対してコメンテータが「焼き物とは難しいものですねえ。」と相槌を打つ場面を見たことがある。
「いやそんなことはないはずです。うまく行く条件を見つけ出せれば、いくらでも素晴らしい焼き物ができるはずです。」と言うとどうなるだろうか。考えるだけでも面白い。

 中谷宇吉郎はイギリスに留学し、その時に他国からの留学生と仲良くしている。そのくだりも面白いものがあって、旧ソ連からの優秀な科学者が帰国した途端にパスポートを剥奪され、出国できなくなったという。頭脳流出を防ぐために外国に行かせなかったのだ。対外的にはウソの理由を発表しているのだが、それがばれているところが面白い。
 また、当時の著名な科学者たちと親しく話し合っている様子もあり、うらやましい。

 自然科学者を目指す人は、この二人の本をぜひとも読んで欲しい。きっと得るところがあるだろう。  

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