銀磨き

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 所用でテキサスに来ている。旧知の友人宅に居候しているのだが、いろいろなことの相談を受け、いくつか解決した。

 その中で、化学ネタを一つ紹介しよう。無機化学編の「銀」のところの記述にもあるが、「汚くなった銀製品を磨くにはどうしたらよいか?」と聞かれたので早速やって見せた。

 銀製品を良く洗って油気を落とし、アルミ箔の上に置く。その上に炭酸水素ナトリウムをばら撒き、水を注ぐだけである。友人は半信半疑であったが、次の日、「すごい、ぴかぴかだ!」と大騒ぎした。近所の人を呼んでパーティを開いてくれたのだが、その席でこれを紹介すると、皆が驚き、メモして帰った。おそらく、その近所では急速にこの方法が広まるに違いない。

 炭酸水素ナトリウムは、この国では"baking soda"として売られている。きわめて安いものである。効果はてきめんで、次の日には家中の銀製品が食卓の上に積まれた。
 プラスティックのタライにアルミ箔を敷き。銀製品を投げ込んだ。どれもぴかぴかになり、しかもこするわけではないから減らない。すべての銀が還元されるから理想的である。

 アルミ箔は腐食し、穴だらけになる。アルミが犠牲になって銀が還元されるのだ。この犠牲という言葉(英語でsacrifice)は、キリスト教信者には、何か感じるところがあるらしい。ぼろぼろのアルミ箔を見て、「身を捨てて銀を助けた!」と感心しきりである。

 日本にはアメリカほど銀製品はない。それは大気中の硫化水素の濃度が高いからであろう。特に海岸近くでは、「磯の香り」の中に硫化水素が含まれているのだが、それにほとんどだれも気が付いていない。要するに海の近くに人が住むことが多く、湿気も多い日本では、銀はかなり錆び易い。
 日本では、銀の地位は低い。代わりにプラチナが賞用される。磨かなくても良いから便利であるが、その色は銀の白さにはかなわない。磨かれた銀ほど美しいものは無いと思う。

 銀製品はその美しさといくつかの元素との鋭敏な反応性により、食器として長らく使われてきた。時に毒殺の手段として使われてきた砒素には、よく反応する。
 久しぶりに銀の食器で食事をした。王侯貴族になったような気がしないでもない。

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潜熱と顕熱 

 先回扱った硫酸ナトリウム十水塩の変態温度は32.4℃であるが、いくつか冷暖房に使えそうなものもあるので紹介しておこう。電力不足の昨今、これを使えばかなりピーク時の電力消費が抑えられそうである。

 塩化カルシウムの六水塩は18℃で変態する。塩化カルシウムの濃厚水溶液を凹凸の多いプラスチック容器に入れ、エアコンの冷風吹き出し口の前に積んでおく。もちろん、全体を箱の中に入れて冷風が直接当たるようにすべきである。電力の余っている夜中にエアコンをフル稼働してこの箱の中身を冷やす。そうすれば、この塩化カルシウムは結晶になり、昼間のピーク時にエアコンを送風にしてもかなりの長時間冷風を送り出させることが可能であろう。

 この概念はずいぶん前から知られているので、基本特許は成立しないであろう。ただ、省エネに結びつけた部分は特許が認められる可能性がある。

 筆者はこれも住宅建設時にアイデアをある程度まとめたのだが、2,3立方メートルの体積が必要で、その質量を考えると大変であった。それとこの装置だけでは温度を多少下げることが可能であっても、さほど快適ではない。湿度があまり低下しないからだ。

 以前にも書いたが、夏季にもさわやかな環境で暮らそうと思うと、湿度を小さくせねばならぬ。
18℃程度ではその温度の飽和蒸気圧がかなり大きいので、空気中の水を絞り出せる量が少ない。
 18℃の飽和水蒸気圧は20mmHg程度で27℃の値の27mmHgの75%程度である。これでは蒸し暑い。除湿機を動かして室内空気から水を絞り出さねばならない。結局のところ、快適な環境を作り出すにはある程度の電力が必要となり、面白くない。

 20年ほど前から、氷蓄熱(蓄冷)エアコンが紹介されている。これも水の変態時の潜熱を利用している。潜熱はその変態時の温度を保ちつつ出入りする熱で、一般的な物質の温度変化をさせるときの熱の出入り(比熱に正比例する)よりはるかに大きいことが、この種の工夫の中心である。後者は顕熱とも呼ばれる。

 氷の場合はO℃での飽和水蒸気圧がとても小さいので、冷風に含まれる水蒸気は少なくなり、湿度が低い環境が得られる。
 
 先週、筆者の住宅全体を1台で冷やしているエアコンが故障し、修理が完了するまで3日間、酷暑の中ひどい生活を強いられた。筆者の家は高断熱の熱容量の大きな住宅なので、最初の日は室温が余り上がらず、さほど不自由はなかった。
 2日目からは外の熱が壁を通して内部に浸透し始め、気温は30℃を越えた。しかし締め切っているので水の供給は、人間の呼気と金魚鉢くらいであるから、気温が上がった分だけ相対湿度が低下した。扇風機の風を浴びれば十分涼しく感じ、凌ぐことができた。いよいよ3日目は室温が34℃にもなり、窓を開けようと思ったが、外は37℃で相対湿度90%を越えているのでそれは諦め、よそに退避した。

 我が家は顕熱しか利用していないが熱容量は大きいので、修理完了後、エアコンの作動によって家の中が27℃になるまで約20時間を要した。
 新しい省エネ型エアコンであったが、意外と故障が多いことをサービスの人から聞いて驚いた。まだ保証期間中で、金銭的な損失はなかったが、精神的、肉体的には大きな損失があった。
 エアコン故障時のバックアップ用に、潜熱利用の補助装置の設置を考えた方がよいかも知れない、と思い始めた。

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