大学入試問題 珍問奇問集

 予備校の講師の仕事を始めたころ、全国の入試を全部解いてみた。ひどいものがあった。その多くは医学部、薬学部または工学部の単科大学の問題で、理学部のある学校の問題にはあまりおかしなものはない。

 化学は現実にあるものを研究する学問であるから、単なる作文では意味をなさないことが多い。実際に存在する物質に対する正しい知識が必要である。
 極端にひどいものを集めてファイルした。暇が出来たら、「全国大学入試問題珍問奇問集」とでも銘打って売り出そうとさえ思ったのだが、その暇がなく、ファイルは引越しのときに行方不明となった。

 しかし、いくつかは覚えているから紹介しよう。

① フェノールの水溶液をフェノールフタレインを指示薬として水酸化ナトリウム水溶液で滴定する問題があった。

 単純に計算すると濃度が求まるのだが、フェノールは溶解度が小さくてそんなに溶けない。しかも指示薬の変色域の外に当量点があり、指示薬の意味がない。さらにpHジャンプがないので、たとえ変色域が合致しても滴定は出来ない。


② 沸点上昇により分子量を求め、構造式を決定する問題があった。

 その物質はギ酸メチルである。その蒸気圧はきわめて大きく、沸点は32℃であって、しかも水にかなり溶ける。これでは、ラウールの法則により沸点降下が起きるであろう。問題作成者はギ酸メチルを見たことがないのだ。


③ 油脂の分子量を求める問題があった。

 計算すると2000にもなる。冗談はやめて欲しい。そんな値を持つ油脂はありえない。油脂の分子量はせいぜい900以下で、入試の答えの8割は884である。
 たまに900を超えるものが出るが、それは落花生油、菜種油を題材に選んだ千葉大学、滋賀医大の問題であった。いわゆる "ご当地問題" である。それらは優秀な問題であった。


 大学の教師といえども実力の怪しい人は多い。困ったことにその間違った入試が某予備校の教科書に採用されて二次被害を撒き散らしていた。
 筆者が拘るのはそこである。生徒たちに正しいデータに基づいた問題を与えたいと思う。

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