金魚とヘンリーの法則

 金魚を飼っている。夜店ですくってきたものが大きく育って体長18cmほどにもなった。水を替えねばならない。
 小学校のころに読んだ本には、たらいに水を張り、1日、日なたに置くとあった。これは化学的に正しい。光のエネルギーを利用して、塩素(次亜塩素酸イオン)が水を酸化し、酸素にしている。塩素は塩化物イオンになる。
 もちろん気体になる塩素は、水面から外に逃げる。それが比率としては大きいだろう。

 ヘンリーの法則はセンター試験の重要な項目で、「溶ける気体の物質量は圧力に比例するが、溶ける気体の体積は一定である。」と丸暗記している人も多いだろう。理解しているつもりでも、実際には使いにくいらしい。
 これを書き換えると「気体の濃度(圧力)は水溶液中の気体の濃度と正比例」ということになる。さらに言い換えれば、「濃い気体(圧力の高い気体)と接触している水溶液の濃度は大きい。」ということになる。
 それなら、気体の圧力(分圧)がゼロであったら、水溶液の中には気体は溶けていないことに気が付く。

 たらいの水道水は、塩素分圧ゼロの大気に接触しているのだから、放置すれば徐々に対流を起こして全ての水から塩素が抜けるというわけである。しかし時間が掛かる。

 筆者はバケツを二つ用意する。片方から他方に勢いよく水道水を注ぐ。無数の泡が生じるが、その泡は全て塩素分圧ゼロの大気である。短い時間であるが、その界面でヘンリーの法則が成立し、泡のなかに塩素が幾分移る。
 この操作を10往復する。もちろん風通しのよいデッキの上で行う。近所の人は不思議そうな顔をして見ているが気にしないことにする。最初の数回は、明らかに塩素臭がするが、その後はほとんど臭わない。2分もあれば作業は完了する。

 実はこの問題は15年ほど前の千葉大学の問題である。筆者がやっていることを出題してくれたので、少々嬉しかった。「金魚を飼うために、水道水の中の塩素を抜きたい。もっとも簡便かつ迅速な方法を示せ。」というものであった。夏期講習の教科書に入れておいたが、生徒は誰も解けなかった。

「真空ポンプで減圧した容器内で保持する」というのが、最も多い答であったが、真空ポンプや耐圧容器はどこの家にもあるものではない。
「煮沸して塩素を追い出す。」というのもあったが、酸素も追い出されるので、金魚は即死する。煮沸した後、冷やすのを忘れた人も多かったが、それでは金魚は煮えてしまうだろう。
 あるいは、空気ポンプで泡をぼこぼこと出すのも良いが、これも時間が掛かる。バケツ2個の方法が安上がりで良いし、健康にも良いだろう。 

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